Columnココロのコラム
「やさしさの貯金」
2021.07.20
今回は私の好きな詩人 柴田トヨさんをご紹介したいと思います。トヨさんは90歳を超えてから詩作を始め、101歳で亡くなるまでに、たくさんの心温まる詩を残されました。そのひとつにこんな詩があります。
「貯金 」 “私ね 人から やさしさを貰ったら 心に貯金をしておくの さびしくなった時は それを引き出して 元気になる あなたも 今から 積んでおきなさい 年金より いいわよ “ 柴田トヨ 詩集「くじけないで」より |
「年金よりいいわよ」の締めくくりに、チャーミングなトヨさんのお人柄が伺えて、思わず笑顔になってしまいます。
優しさの貯金ができたらとても素敵だなと思いますが、それにはまず「人から貰ったやさしさ」に気づくことが必要ですね。あなたが思う優しい人はどんな人でしょうか。どんなことをされたら、優しくしてもらったと感じるでしょうか。優しさという概念は、とても主観的で、人によって感じ方が異なります。
笑顔で挨拶してもらった
さりげなくドアを開けてもらった
辛いとき「大丈夫?」と声をかけてもらった
それを優しさだと感じるかどうかは人それぞれです。でも、自分のために誰かがしてくれたことを優しさだと思えたら、沸々と幸せな気持ちになってくる気がしませんか。私は、人からもらった優しさや思いやりに気づくことができるのも、また「やさしさ」ではないかと思います。きっとたくさんの優しさを貯金していたトヨさんは、とても思いやりに溢れた優しい人だったのだろうと、この詩を含めた多くの作品から伝わってくる気がするのです。
きっとあなたや私の周りにもたくさんの優しさがあふれています。人からもらった優しさにちゃんと気づくことができたら、それは自分の口座にどんどん貯まって、寂しいとき、辛いときの支えになってくれるかもしれません。そして自然と、自分も人に優しくありたいと思えるようになったら素敵ですね。
しわしわのおばあちゃんになって、家族と離れて施設で暮らすことになっても、笑顔で毎日を過ごせるように、私も今からたくさんの「やさしさ」を貯金しておきたいと思います。
※柴田トヨ 著「くじけないで」 飛鳥新社刊 より引用させてていただきました。